GERN(Geron)で見るバイオの可能性
GERNが羊のドリーについて特許を持っているといわれていますが、私はドリーとGERNの関係はよく知りません。しかし哺乳類でクローンの作成が理論的に可能なことは大分前から周知の事実でしたし、実際その後世界の多くの施設で次々にクローン動物が誕生して います。GERNがこの分野でどのような特許を押さえているのか知りませんが、たとえ 特許がからんでいたとしても、そのこと自体はあまり大したことではないと思います 。最近GERNの株価が15%ぐらい上昇しました。同社の開発したタンパク質が免 疫組織を活性化させ、ガン細胞を抑えたという理由らしいですが、どの程度の価値と 考えたらよいのでしょうか。ベンチャーではこの類の話は時々ありますし、話題だけ で動いた可能性もあります。これも私にはよくわかりません。 GERNが注目を集めているのは、人間の幹細胞とその基礎医学、及び再生医療への応用なのです。精子と卵子が結合し一つの体細胞が形成されます。これが分裂を繰り返して胎児となっていくわけですが、その初期の段階で、後に全ての臓器に分化する最も基本的な細胞が出現します。これが胎性幹細胞(正確には「胎原性幹細胞」でしょうか、「万能細胞」とも呼ばれている)です。動物においてはこれがすでに分離され、培養、保存されているのです。そして培養条件により体内の種々の細胞に分化していくことが確認されつつあります。
もちろんこの細胞から実際の肝臓や、ポンプ機能を持った心臓を作り、それを移植に使うというのは現段階では夢物語でしょう。現在はもっと単純な応用が考えられてい ます。アメリカの某ベンチャーが、新生児が割礼を受けたときの皮膚をもらい受け、 それを培養して移植用の皮膚として販売している話は聞かれたことがあるかと思いま す。つまり三次元構造を持つ機能的な臓器を作るのはSF世界の話としても、皮膚や細 胞レベルでの再生や移植医療の話はかなり現実味を帯びてきており、ビジネスとして も成り立つ時代になってきました。 この分野は医学研究の分野においても、現在最もホットなトピックスとなっています 。ビジネスに直接関係あるのは応用分野ですが、学術的にはこれらのテーマは、発生 学や遺伝子発現の基本的な問題と密接に関連しています。つまり、私たちの体の全て の細胞は、個人ごとに同じ遺伝子(=DNA)を持っています。体の全ての細胞は共通の 細胞(胎生幹細胞)に由来し、それがある細胞は脳になり、肝臓になり、皮膚になる のは、その分化の過程で異なった遺伝子が発現するからに他なりません。この領域は 最近急速な進展を遂げつつあります。 大分長くなってしまいました。書き始めるとキリがありませんのでこれについては、一つ本を紹介します。
「ES細胞」 大朏博善 著 文春新書
この本はバイオに関心がある方は一読の価値があると思います。 ES細胞には、上述した再生、移植医療を含め、製薬の研究開発の手段など、ビジネス 上大きな可能性が潜んでいます(と思います)。このあたりのことはこの本を読んで 頂くほうが、楽しく明快に理解できるのではないかと思います。久しぶりに感激した 本でした。 もちろんこの分野を手がけようとしているベンチャーは他にもあります。株価及びビ ジネス上の価値判断は個々の立場で決めて頂かなければなりません。決してお勧めす るわけではありませんが、一つの可能性として私はGERNに目を付けました。 しかし、こういうものは多分ものにならない確率の方がはるかに高いのでしょうね。 最悪の場合つぶれるかもしれません。 これはあくまでも夢なのです。私には、バイオの分野における10年後のマイクロソフ ト、シスコシステムズを想像するのがとても楽しみなのです。